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【開発エピソード】ダイニングチェア~ムン・ダイニングアームチェアの商品開発~

【開発エピソード】ダイニングチェア~ムン・ダイニングアームチェアの商品開発~

家具の中で椅子に関しては歴史が非常に古く、世の中には数多くのデザインや種類の椅子が存在します。デザイン美を追求した椅子や機能性・安全性を追及した椅子など形は違えど、多くのすばらしい椅子が世に送り出されている中で、a.flatではブランドメッセージである「その暮らしに、アジアの風を」を具現化するべく、アジアの代表的な天然素材であるウォーターヒヤシンスやラタンを使ったアームチェアを開発いたしました。a.flatの世界感や普遍性をテーマに開発された、「ムン・ダイニングアームチェア」に関わる商品の開発エピソードをご紹介させていただきます。

プロローグ

アジアンリゾート家具と言えば、ウォーターヒヤシンスやラタンなどの天然素材を真っ先に思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?ムン・ダイニングアームチェアは「月」をテーマに開発した椅子で、その特徴的なフォルムは背もたれと後脚のギャップで、まるで月の光が生み出す陰影をイメージさせてくれます。一般的なウォーターヒヤシンスやラタンを編みこんだアームチェアと言えば、素材の編みこみが純朴で直線的なデザインが主流ですが、ムン・ダイニングアームチェアはアジアンリゾートを連想させる綺麗に編みこまれたその素材もさることながら、体を包み込むように湾曲した背もたれが生み出す座り心地はまさに寛ぐために作られた椅子と言えます。アジアの代表的な天然素材とデザイン性を融合させたアームチェアですが、商品の開発には多くの検証と改良プロセスが必要でした。

アームチェアの歩み

a.flatのウォーターヒヤシンスやラタンの天然素材を使用したアームチェアは2001年から発売しておりました。これまでに発売したヒヤシンス、ラタン・アームチェアはマイナーチェンジを含めると計4種類。いずれのアームチェアのデザインも直線的で、ヒヤシンスやラタンの編み込みも平面編みの商品でした。また、座面裏板が外れるようになっており、座面フレームに不具合が発生した際にメンテナンスができるのも、この商品の特徴でした。長くの間、お客様にご愛顧頂いたこれまでのヒヤシンス、ラタン・アームチェアはアジアらしさが感じられるロングセラー商品でした。

アームチェアシリーズの初期モデルのナチュラル・ラタン・アームチェア。ラタンの素材そのものを生かした塗装色で、アーム幅が割りと太くエスニック風なデザインでした。

ブラウン・ヒヤシンス・アームチェア。ブラック・ラタン、ナチュラル・ラタンと同シリーズとして販売されました。初期モデルはともに、素材を潤沢に使用した直線的なデザインでした。

初期モデルの後発商品として販売開始された、ラタン・アームチェアv02とヒヤシンス・アームチェア。よりスタイリッシュになったアーム部分が特徴で、初期モデルよりも腕を置きやすいように、アームの高さが約25mm引く設定されています。

ムン・ダイニングアームチェア商品のご紹介

ムン・ダイニングアームチェア

「月」をテーマに開発したムン・ダイニングアームチェアですが、その特徴的なデザインと最上の座り心地はまさに寛ぐために作られた椅子です。アジアの代表的な天然素材である、ウォーターヒヤシンスとラタンが椅子のデザインと融合して癒しの空間に誘います。

ムン・ダイニングアームチェアの開発プロセス

一般的なヒヤシンスやラタンで編み込んだ椅子は構造的な制約から考えて、デザインも限られたものになってしまいます。これらと対照的な、ムン・ダイニングアームチェアにしかない特徴はこの椅子の随所に見られます。商品名の由来になった月光の陰影を意識した後脚のデザインを具現化するためには、椅子の内部構造を大きく変える必要がありました。また、アームチェアとしての最上の座り心地を提供するため、背面は弧を描くような曲線となっています。この曲線は何度も試作を重ねて、体にフィットする最適な丸みを設定しました。目指したゴールが遠かったため、試作初期段階のサンプルは耐久試験をクリアすることが出来なかったのですが、工場の技術者やスタッフの協力もあり、デザイン性と座り心地の両方を兼ね備えるアジアンリゾートのアームチェアを完成することができました。

■背面と後脚の陰影を作り出す構造

ムン・ダイニングアームチェアは弧を描くような丸みのある背面と後脚のギャップが大きな特徴ですので、構造的に一番の課題である、背面と後脚の接合に集中しました。美しいデザインを擬似的に表現するためには、後脚と前脚に段差をつける必要があります。この箇所は天然素材のヒヤシンス、ラタンと木部(脚)の一体感を表現するのには必要不可欠な段差となります。ただし、あまりに段差が深すぎると強度的に弱い椅子となってしまいますので、十分な強度を確保するために5回の製作中に少しずつ微調整をいたしました。

試作品の製作が進む中、徐々に脚の段差の寸法補正を行いました。a.flatの椅子としての強度とデザイン性を確保するための重要な開発プロセスでした。

5回目の試作にて、ヒヤシンス素材と無垢材の脚との繋がりが綺麗になりました。強度試験も無事合格し、今回一番の課題を乗り切ることができました。

■美しい曲線を描くフィット感満載の背面構造

ムン・ダイニングアームチェアの背面とアームの厚みは軽やかさが際立つ薄さの約35ミリの厚みで設定しております。開発初期時の耐久試験失敗の原因には背面の内部構造も関係していました。ムン・ダイニングアームチェアの背面は丸みのある曲線でデザインされていますので、どうしても直線的な背面よりも構造が複雑になってしまいます。開発途中で一時的に背面の厚みを40ミリ以上にして強度向上を考えましたが、ムン・ダイニングアームチェアの軽やかさが台無しになってしまい、再度背面の構造材と組み方の改良を行い、背面とアームの厚みの統一に成功しました。

前モデルのヒヤシンス・アームチェアの背面形状は、曲線とはならず角張っていました。座り心地もムン・ダイニングアームチェアほどのフィット感は得られませんでした。

背面内部の構造材の見直し行い、内部構造材を円弧320Rの切り出した無垢材を使用することにより、強度の向上はもちろん、体にフィットする座り心地が実現できました。

■座り心地を保つための座面下構造

実は歴代のヒヤシンス、ラタン・アームチェアは座面の上にもヒヤシンスやラタンの素材が編み込まれていました。対してムン・ダイニングアームチェアの座面素材に関しては、ヒヤシンスやラタンではなく塗装合板を使用しております。ムン・ダイニングアームチェアは座面の表裏を塗装合板にすることにより、内部構造をフレーム化(フラッシュ構造)にして更に強度を上げております。ムン・ダイニングアームチェアの座面下構造は、極力メンテナンスをする必要のない構造となっています。

ムン・ダイニングアームチェアの座面下構造

歴代のアームチェアの場合、座面裏板を外して修理することができましたが、ムン・ダイニングアームチェアは座面内部の構造をフレーム化(フラッシュ構造)することにより、座面強度を向上させて極力メンテナンスをする必要のない仕様としました。

■ムン・ダイニングアームチェアの耐久性と商品重量について

ムン・ダイニングアームチェアを開発する重要なプロセスとして、椅子の耐久試験を実施しています。試作と耐久試験を繰り返していくうちに、デザインの実現に必要ならば少しでも削り落とすことを行い、ムン・ダイニングアームチェアの軽量化にも成功いたしました。歴代のアームチェアと比較しても約2.3~2.7kgも軽く、十分な安全性も確保しています。このように、a.flatでは椅子の安全性に関する標準化を徹底するためにJIS(日本工業規格)やISO(国際標準化機構)の強度試験規格を採用・実施しています。

商品強度試験の実施

椅子の設計は安全性能を確認するため、JIS(日本工業規格)やISO(国際標準機構)の強度試験を実施しており、デザインのみではなく設計から椅子の安全性を意識しています。ムン・ダイニングアームチェアも試作と耐久試験を繰り返し、デザインの擬似化に必要な余分な箇所をそぎ落として、耐久性の確保と軽量化にも成功しました。

ムン・ダイニングアームチェアの生産プロセス

ムン・ダイニングアームチェアを生産する上で、考慮しなければならないのはウォーター・ヒヤシンスとラタンの素材の特性です。天然素材であるがゆえに十分な乾燥プロセスなど、素材管理に手数が掛かる側面もございます。また、デザイン性の高いムン・ダイニングアームチェアのヒヤシンス、ラタン素材の編み込みには経験値の高い編み込み職人が必要となります。

■ラタン、ウォーターヒヤシンス素材の乾燥について

天然素材であるラタン、ウォーターヒヤシンスは水分を吸い込みやすいので、素材の乾燥は必須となります。a.flatでは商品に編み込む前の段階で十分な天然乾燥を行っています。また、商品に編み込まれた後でも高い温度を保った乾燥室にて二次乾燥を行います。この一連の乾燥プロセスにより、素材の収縮による編み込み部の隙間の発生やカビの発生を抑止しています。

乾燥後のラタン。強くしなやかさを兼ね備えるアジアの天然素材は、乾燥後により軽く強度が上がります。

天日乾燥中のウォーターヒヤシンス。乾燥により水分が抜けてくると薄茶色の素材感に変わってきます。

■卓越した職人技の編み込み技法

一度乾燥したヒヤシンスやラタン素材は水分が抜けているので、素材自体が硬く湾曲性がなくなります。従って、家具に素材を編み込む際には部分的に適量の水分が必要になり、職人は少しずつ時間を掛けながら作業を進めていきます。特異なデザイン性を持つ、ムン・ダイニングアームチェアはそんな職人泣かせの商品でもあります。特に背面と後脚の陰影(ギャップ)部位には素材を押し込みながら丹念に時間を掛けて陰影を作っていきます。編み込み完成後に再び乾燥プロセスを行い、素材が引き締まりきって、ようやく一つの椅子が完成いたします。

ムン・ダイニングアームチェアの背面と後脚の陰影(ギャップ)をつくるには、専用工具を使いヒヤシンスやラタンの素材を少しずつ押し込みながら丹念に時間を掛けて陰影をつくります。

卓越した職人でなければ素材が割れてしまったり、陰影が上手に表現できなかったりします。美しいデザイン性を持つムン・ダイニングアームチェアは職人泣かせな商品でもあります。

ムン・ダイニングアームチェアの特徴

a.flatのムン・ダイニングアームチェアは、アジアの代表的な天然素材であるウォーター・ヒヤシンスとラタンが使われており、技術と経験のある職人達が丹念に、時間を掛けて編み込みしています。さらにムン・ダイニングアームチェアは、従来の天然素材系のアームチェアとは一線を画す、デザインと最上の座り心地の両立を命題として開発されました。ムン・ダイニングアームチェアは、最上を目指すがゆえにデザインや座り心地だけでなく、容易に真似の出来ない幾つもの特徴がございます。

①背と後脚のギャップが生み出す陰影

ムン・ダイニングアームチェアの背面は、後脚とのギャップをつけたデザインにより、月の光が生み出す陰影を表現しています。職人が一つ一つ丁寧に編み込んだラタンが魅力。人の温もりやアジアン素材ならではの風合いが感じられます。

②美しい曲線を描く、背もたれと座面角度

美しい曲線を描く背もたれと座の角度は、背中から腰までしっかりフィットするよう設計されています。背骨が自然なS字カーブを描くことで正しい座り姿勢を保ちます。従来のアームチェアとは一線を画す座り心地が体現できます。

③抱擁感漂うアームから背面への形状

ムン・ダイニングアームチェアのアーム幅は細く設計されています。座った際には、細く、程よい丸み形状のあるアームと背もたれのカーブが抱擁感を感じさせてくれます。外観的には細くスマートなアームですが、内部構造は脚と一対の無垢材でフレーム組みしていますので、強度的にも安心です。

④チェアカバーの色替え

a.flat商品の普遍的な要素でもあるチェアカバーの色替え。ムン・ダイニングアームチェアも他のチェアと同様に、カバーの色や生地が選べます(別売り)。チェアカバーもお客様ご自身で簡単に交換ができ、多数の生地素材・色からお好みのチェアカバーを選ぶことが出来ます。色は約100色取り揃えております。

9つのa.flatスタイルカラーの中には、肌触りの違いや繊細なカラーグラデーションを持ったファブリックが勢ぞろい。あなたらしい暮らしやカラーコーディネートが実現できる、お気に入りの色や素材感のファブリックがきっと見つかるはずです。(別売、受注生産)

チェアカバーは簡単にファスナーで着脱可能となっております。ご注文頂いてから1点1点日本で丁寧に縫製を行っております。受注生産の為お届けまでに少しお時間を頂いておりますが、その分しっかりと長く使える質の良いカバーをご提供させて頂きます。

ムン・ラウンジチェアの商品紹介

ムン・ダイニングアームチェアと同じ、「月」をコンセプトにデザインした、「ムン・ラウンジチェア」。ヒヤシンスやラタン素材を贅沢に編み込んだラウンジチェアで、背面と後脚の陰影はムン・ダイニングアームチェアよりも奥行きをつけた表情となっています。ムン・ラウンジチェアはお部屋内のレイアウトの自由度が高く、リビングルームにソファと組み合わせて置くと大人数が集まる楽しい空間となります。

ムン・ラウンジチェアは通常の1人掛けソファよりも軽く、お部屋の中で移動がし易いのが特長です。2.5人掛けや3人掛けソファと組み合わせて置くと、大人数が集まって楽しむ贅沢なリビングルームになります。ラタン、ヒヤシンスの天然素材ならではのリゾート感あふれる空間を演出します。

大きなカーブを描く背もたれとふんわりとしたファイバーボールが詰まった背クッションが、背中をやさしく包み込むと同時にしっかりと支えてくれます。体を安心して預けられる座面と背もたれのサイズ感にもこだわり、体が適度に沈み込む上質な座り心地を実現しました。

関連コラム

月光の陰影~ムン・ダイニングアームチェアのデザインについて~

ムン・ダイニングアームチェアをデザインする際に思い浮かべたのは、月を鑑賞するために作られた桂離宮の「月見台」でした。そこに合う椅子は月のようになるのではないかと思い、追求した結果、ムン・ダイニングアームチェアのデザインに行き着きました。ギラッとした灼熱の太陽ではなく、しっとりとした月のような佇まいの椅子。そこには涼やかな風が流れているイメージがあります。素材を丁寧に編み込むことで、アームから背面に落ちる影をしっとりと上品に作ることができ、イメージしていた月見台に似合う「月」の佇まいの椅子が完成しました。座り心地もとても良く仕上がり、お客様のお部屋を素敵に彩り、心地よく使っていただけると良いなと思います。

まとめ

今回のムン・ダイニングアームチェアの商品開発エピソードは如何でしたでしょうか?ムン・ダイニングアームチェアのデザイン的な特徴である、背面と後脚の適度な陰影をつけるにあたり、強度試験に耐えうる構造組みと職人技のヒヤシンス、ラタンの編み込みは、ムン・ダイニングアームチェアの外観の美しさからは想像できない開発プロセスでした。ムン・ダイニングアームチェアの商品開発上のプロセスや商品の特徴、他の商品との違いを知っていただいた上で、さらにムン・ダイニングアームチェアに興味を持って頂ければと思います。a.flatは今後もデザイン性が高く一般的に困難と思われる商品にもチャレンジし、お客様に満足して頂ける商品の開発をおこなってまいります。

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