洗練された軽やかさが印象的な、新商品カフウ・ダイニングチェアは蓮の上を吹き渡る風「荷風(カフウ)」をコンセプトに開発されました。シンプルさの中にa.flatにしかないオリジナリティを取り入れた、「カフウ・ダイニングチェア」に関わる商品の開発エピソードをご紹介させていただきます。
プロローグ
一般的なラタンやウォーター・ヒヤシンスを編み込んだダイニングチェアは、背もたれに丸みが少なく四角いイメージがあります。丸みが少ないという事は、必然的に椅子の重量も重たくなります。軽やかさが印象的な椅子を、a.flatの商品ラインナップに加えることが出来れば、お客様へのご提案の幅を広げることができます。カフウ・ダイニングチェアはシンプルな見た目と裏腹に課題も多く、商品開発に関わる歴史の中でリリースまで一番時間が掛かった商品となりました。カフウ・ダイニングチェアは多くの試作・検証を重ねた分、完成度が高いダイニングチェアとして誕生いたしました。
ダイニングチェアの歩み
a.flatが創業してまもなく、ヒヤシンス素材を椅子全体に編み込んだチェアや、背もたれにラタンシートを使用したバリ・チェアなど、十数種類を超える様々なダイニングチェアが生まれてきました。少しずつ進化してきたダイニングチェアの歴史の中で「アジアの風」をより感じることのできるロク・ダイニングチェア、カオ・ダイニングチェアは2013年発売以来のロングセラーのダイニングチェアとなっています。
ロク・ダイニングチェアの特徴はアジアンリゾートの素材感を前面に醸しながら、くの字に折れた背もたれが快適な座りごこちを約束してくれます。
アジア色の強いカオ・ダイニングチェアはアジアンリゾートホテルで使われることの多い角材をモチーフに作られ、安心して体をあずけられるデザインとなっています。
カフウ・ダイニングチェア商品のご紹介
カフウ・ダイニングチェアの開発プロセス
削りだしの木製の椅子のように、スタイリッシュで軽やかなデザインを表現するためには何をするべきかと考えた時、背もたれ内部の構造を削ぎ落とすことにたどり着きました。椅子として最も重要な要素である座りごこちを向上させ、背もたれの曲線も体にフィットする形状が完成しました。カフウ・ダイニングチェアは長い開発期間を経て商品化しましたが、その試作回数は8回にも及びます。二年以上の時間をかけて、デザイナーや生産工場の技術スタッフと課題を共有し心を込めて作り上げた商品となりました。
■カフウ・ダイニングチェアの開発プロセスについて
カフウ・ダイニングチェアは軽やかに見えるよう椅子の各箇所に丸みが施されています。実は、初回の試作品の背もたれの形状は長方形のような形でした。長い開発プロセスの中で、背もたれ内部の素材を削ぎ落とし、背中にフィットするように円弧をつけましたが、その中で一番の課題が椅子の強度でした。後脚と前脚を繋いでいるパーツの強度が上がらず、6回目の試作品で強度試験に合格しました。長い期間をかけて、カフウ・ダイニングチェアは一つ一つ課題を克服して完成しました。
■カフウ・ダイニングチェアの耐久性について
椅子を開発する重要なプロセスとして、a.flatでは椅子の耐久試験を実施しています。カフウ・ダイニングチェアは、その軽やかなデザインであるが故に、一般的な椅子と比べて強度の確保が難しい面がありましたが、椅子の改良を重ねていくうちにデザイン性と耐久性の確保が実現できました。a.flatでは椅子の耐久性評価に関する標準化を徹底するためにJIS(日本工業規格)やISO(国際標準化機構)の強度試験規格を採用・実施しています。
カフウ・ダイニングチェアの製造プロセス
カフウ・ダイニングチェアを生産する上で、考慮しなければならないのはラタン、ウォーターヒヤシンスの素材の特性です。天然素材であるがゆえに十分な乾燥プロセスなど、素材管理に手数が掛かる側面もございます。また、デザイン性の高いカフウ・ダイニングチェアのヒヤシンス、ラタン素材の編み込みには経験値の高い編み込み職人が必要となります。
■ラタン、ウォーターヒヤシンス素材の乾燥について
天然素材であるラタン、ウォーターヒヤシンスは水分を吸い込みやすいので、素材の乾燥は必須となります。a.flatでは商品に編み込む前の段階で十分な天然乾燥を行っています。また、商品に編み込まれた後でも高い温度を保った乾燥室にて二次乾燥を行います。この一連の乾燥プロセスにより、素材の収縮による編み込み部の隙間の発生やカビの発生を抑止しています。
■卓越した職人技の編み込み技法
一度乾燥したヒヤシンスやラタン素材は水分が抜けているので、素材自体が硬く湾曲性がなくなります。従って、家具に素材を編み込む際には適量の水分が必要になり、職人は少しずつ時間を掛けながら作業を進めていきます。カフウ・ダイニングチェアは経験と編み込み技術が豊富な職人でなければ、安定して作ることが難しい商品でもあります。
カフウ・ダイニングチェアの特徴
一般的なヒヤシンスやラタンで編み込んだ椅子は構造的な制約から考えて、デザインも保守的なものとなってしまいます。一見シンプルに見える、カフウ・ダイニングチェアの特徴はこの椅子の随所に見られます。蓮の上を吹き渡る風が、まさに「荷風(カフウ)」の由来です。蓮の葉のように独立したように浮かぶ座面、細く力強くしなり立つような後脚、柔らかな丸みのある背もたれ。どれを取ってもイメージ通りの椅子に仕上がりました。
①蓮の葉のように水面に浮かぶイメージの座面形状
切り込みのあるスイレンの葉と異なり、蓮の葉の形状は丸みのある綺麗な葉の形状をしています。水面に浮かぶ蓮の葉をイメージした、カフウ・ダイニングチェアの座面は椅子の後方から見れば、まるで座面が水上に浮かんでいるイメージを与えてくれます。
まるで、水上に浮かんでいるイメージを連想させてくれるカフウ・ダイニングチェアの座面。ラタン、ヒヤシンスと融合し、癒しのある座りごこちを提供してくれます。
②美しく、しなりのある後脚デザイン
カフウ・ダイニングチェアは、丸みのある後脚が美しい「しなり」を表現しています。細く美しいデザインながら、改良を重ねて椅子の強度試験にも合格しました。
丸みを帯びた背もたれからつながる、美しいカーブを描いた細くてしなやかな後脚デザイン。椅子の背面から見た全体的な抜け感と相まって、リゾートの開放感を感じさせてくれます。ディテールにこだわった曲線と丸みを帯びた後脚デザインがカフウ・ダイニングチェアの特徴です。
③やわらかな、丸みのある背もたれ
カフウ・ダイニングチェアの背もたれは、背もたれ内部の木部を削ぎ落としラタンやヒヤシンスを編み込むことで、やわらかな丸みのある形状を作り上げています。商品の改良を繰り返し、背もたれの強度の確保と軽量化の両立を実現しました。
④荷風が蓮の上を吹き渡るような、チェアデザインと心地良い座りごこち
カフウ・ダイニングチェアの背もたれにはテーパーを付け、緩やかな丸みのある座面と背もたれの間の抜け感は、まさに蓮の上を吹き渡る風、荷風(カフウ)のようなデザインとなっています。また、カフウ・ダイニングチェアは特徴のある座面・脚・背もたれが一体となり、座りごこちの良さにも優れています。
蓮の上を吹き渡る風、「荷風(カフウ)」を椅子のデザインに取り入れました。デザイン、強度、座りごこちに関して、完成度の高い椅子となりました。
⑤チェアカバーの色替え
a.flat商品の普遍的な要素でもあるチェアカバーの色替え。カフウ・ダイニングチェアも他のチェアと同様に、カバーの色や生地が選べます(別売り)。チェアカバーもお客様ご自身で簡単に交換ができ、多数の生地素材・色からお好みのチェアカバーを選ぶことが出来ます。色は約100色取り揃えております。
9つのa.flatスタイルカラーの中には、肌触りの違いや繊細なカラーグラデーションを持ったファブリックが勢ぞろい。あなたらしい暮らしやカラーコーディネートが実現できる、お気に入りの色や素材感のファブリックがきっと見つかるはずです。(別売、受注生産)
座面にカバーを被せて紐で固定するだけで、簡単にチェアカバー交換ができます。ご注文頂いてから1点1点日本で丁寧に縫製を行っております。受注生産の為お届けまでに少しお時間を頂いておりますが、その分しっかりと長く使える質の良いカバーをご提供させて頂きます。
まとめ
新商品のカフウ・ダイニングチェアの商品開発エピソードは如何でしたでしょうか?カフウ・ダイニングチェアは荷風(かふう)をイメージして作り上げたチェアで、背もたれ・座面・脚の細部に至るまでデザインに拘りぬいた椅子でした。外観的な抜け感や軽やかさを感じる反面、内部構造や座りごこちにも改良を加え計8回の試作と約二年間という長い商品開発期間を要しました。商品開発が先に進まず、商品化を諦めかけた時もありましたが、今はカフウ・ダイニングチェアを無事発売することができたことに喜びを感じます。a.flatはこの貴重な経験を生かし、今後もデザイン性が高く一般的に困難と思われる商品にもチャレンジし、お客様に満足して頂ける商品の開発をおこなってまいります。